執筆:岡田
「ママ、これ本当なんかな?」
ある日、高校生の娘がスマホを片手に私のもとへやってきました。SNSで見かけた“勉強法”を信じて実践していたものの、どうも効果が感じられない様子。そこで一緒に情報の出どころを調べ直したことが、我が家の「情報リテラシー教育」の始まりでした。
今や、家族の会話の中で「それ、どこ情報?」「他にも調べてみようか?」が合言葉。AIやSNSが当たり前の時代、予備校講師であり、2人の娘を持つ私が、親子で“情報を見抜く力”を育てる日々の工夫をご紹介します。
なぜ今「情報リテラシー教育」が必要なのか?
AIが生活に溶け込んだ現代、情報の流れはかつてないほど速く、誰でも発信者になれる時代です。
便利になった反面、ウソや偏った情報、悪意あるフェイクニュースも溢れています。とくに成長途中の子どもたちは、それらの情報を鵜呑みにしたり、間違った使い方をしたりするリスクも高く、親としては不安を感じずにはいられません。

高校生の娘が、ChatGPTで調べた内容をそのままノートに写していたことがありました。よく見ると、古い情報が混じっていて、本人も「信じて損した…」とがっかりしていました。
AIを使いこなすには、”使う側のリテラシー”が不可欠なのだと実感した瞬間でした。
親も“情報を見抜く力”をまなぶげきです。
私自身、昭和生まれで情報源は新聞やテレビが当たり前でした。でも、今の娘たちはYouTubeやTikTokで情報を集めるのが日課。先日も「SNSでバズってた医療の話、本当だと思ってた」と言い出し、調べてみたらデマ情報だったのです。
この経験から、私は親こそが情報リテラシーを学ぶ必要があると強く感じました。今では、娘が見た情報について「どう思った?」「他の情報も見てみた?」「出所はどこ?」と、軽い雑談を通して視野を広げるよう心がけています。情報に「正解」がないからこそ、考えるクセを親子でつけることが大切です。
【実践】私たち親子が取り入れた「情報を見抜く習慣」
AIやSNS、ニュースに振り回されない力を育むため、私たちは以下の3つの習慣を実践しています。
習慣1:ニュースサイトで「裏側」を読み解く
「ネットにある情報=すべて正しい」ではない。それを親子で学ぶために、まずはニュースの読み方からスタートしました。娘が中学生の頃は「Yahoo!きっずニュース」で、高校生になった今は「NHK for School」で、一緒に時事問題をチェックしています。
私たちが実践しているステップ:
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事実と意見の区別: 記事を読み、何が「客観的な事実」で、何が「筆者の意見」なのかを一緒に分類する。
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表現の分析: 記事の中で使われている言葉が「感情的」か「中立的」かを見極める練習をする。
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比較と検証: 「別のニュースサイトではどう伝えているか?」を比較することで、多角的な視点を養う。

ある日、SNSで話題になっていた芸能ニュースについて、娘が「この記事って本当に本人が話してるの?」と疑問を持ったことがありました。この”一次情報を確認する”という姿勢は、この習慣を続けていたからこそ自然と身についたのだと思います。
習慣2:ChatGPTを「先生」ではなく「アシスタント」として使う
AIを使えば調べものは簡単。でも、間違っていたらどうする?そんな疑問から始まったのが、ChatGPTを活用した「情報の裏どりトレーニング」です。
高校生の娘は、レポート課題や探究学習でAIを活用する機会が増えています。たとえば「第一次世界大戦の原因は?」という質問をChatGPTに入力したあと、図書館で借りた本やNHKのウェブ資料と照らし合わせて、正確性を確認するというワークを一緒に行いました。
その結果、娘は「AIは便利だけど、完璧じゃないんだ」と実感し、“使いこなす視点”でAIを見るようになりました。

娘がChatGPTに「高校の進路に向いてる学部は?」と質問したことがありました。私はすぐに「それで決めちゃうの?」とは言わず、
「その答え、どうやって出されたと思う?」と問いかけました。
このやり取りを通して感じたのは、「親が答えを出さないことで、子どもは考える力を伸ばす」ということです。
習慣3:親子で「フェイクニュース見破りゲーム」
高校生の娘は、スマホが生活の一部。だからこそ、「遊び感覚で学べるツール」を使って、楽しく学ぶことを意識しました。特にお気に入りだったのが「Factitious」と「Bad News Game」。
アプリ名 | 特徴 | 学べる力 |
Factitious | 本物と偽物のニュースを見分けるクイズゲーム | 意見と事実の区別、情報選別力 |
Bad News Game | フェイクニュースを「発信する側」として学ぶ | 信頼性の判断、拡散の仕組み理解 |
我が家では週末の親子対戦イベントとして活用しています。「これは怪しいタイトル!」「このサイト初めて聞いた!」と、娘と意見を交わす時間が増え、自然とメディアを疑う視点が身についていきました。

ゲームをきっかけに、娘が「情報に振り回されない自分」でいることの大切さを実感しているようです。高校生になった今でも、娘とChatGPTやSNSの使い方について雑談する時間は、親子の信頼関係を育てる大切な時間になっています。
家庭でできる!情報リテラシーを育む3つの「親の姿勢」
「知らない」と親が言えることが、子どもの学びを深めます。
正解を教えるより「一緒に考える」姿勢を大切に
子どもに「このニュースって本当?」と聞かれたとき、つい正解を言いたくなりますよね。でも、ある日娘から「ママが全部教えてくれると、自分で考えなくなる」と言われて反省しました。
そこで、私は”伴走スタイル”に変えました。
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「うーん、私もよくわからないな。どう思う?」と問いかける。
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「調べてみようか。一緒に見てみよう!」と提案する。
この姿勢が、子どもの「自分の考え」を言葉にする力、そして自ら調べる習慣を育てます。
AIやSNSを「禁止」せず、一緒に使う「共学スタイル」
娘が初めてChatGPTを使って英作文の練習をしたとき、「これって使いすぎたらズルなのかな?」と不安そうにしていました。そのとき私が提案したのは、「一緒に使って、どこが良くなったか振り返ってみよう」というワーク。
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一緒にAIの答えを読み上げて、「これは正しい?どこが変?」とディスカッションする。
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SNSで気になる投稿を見つけたら、「どうしてこういう投稿がバズったのか」を一緒に考える。
こうした習慣が、“受け身の使い方”から“主体的な活用”への意識転換につながっていると実感しています。
「完璧な親」ではなく「素直な親」になる
私も完璧な人間ではありません。時にはSNSの匿名アカウントの“炎上投稿”に惑わされそうになった経験もあります。そんなとき、娘たちに「ママもこれを見て、一瞬だまされそうになったんだ」と正直に話しました。
この経験を共有することで、娘たちは「親も間違えるんだ」「どんな情報も疑ってかかる必要があるんだ」ということを学び、より注意深く情報を扱うようになりました。
まとめ|親子で育てる「情報を見抜く力」が未来を守る
SNS、ニュース、AIチャット……子どもたちは、私たちの想像を超えるスピードと量で情報に触れています。だからこそ今、「情報を見抜く力」=情報リテラシーは、生きる力のひとつとして家庭で育てていく必要があります。
家庭という小さな場所から、子どもの一生の“情報を見抜く力”を育てていきましょう。これは、AIには絶対にできない親子の大きな役割だと思います。
最後に・・・
AIが家庭にある時代、「ツールは与えた、あとは自分でやって」では子どもは育ちません。親がそっと隣に立ち、「それって本当に正しいのかな?」と一言添えるだけで、子どもは安心し、深く考えるようになります。
情報社会で生きるこれからの子どもたちにとって、「見抜く力」は何よりも強い武器です。
そしてそれは、家庭という小さな場所で、親子の小さな対話から育まれていくのです。